建築家が建築設計図面に書く重みを考える
下積み時代に建築材料のゴミ、産業廃棄物について書いてある本があることを知り、そこには建築の天井や壁の内装下地としてほぼ使われている石膏ボードの大部分が埋立処分されているということが書いてありました。下積み時代の事務所にあった本で、その本を後で購入しようと思っていたのですが(お金がなく)、名前がはっきりと思い出せずまだ購入できておりません。確か茶色の本で、虎の巻と書いてあったような。
どなたか心当たりがあればご連絡いただければと思います。
設計者は建築を造るための図面を描きます。図面には平面図や立面図のような図面だけではなく、建築を構成する材料が記載された仕上表というものがあり、設計者は建築材料を指定しています。石膏ボードが埋立処分されていることを知らない時は何も気にせず仕上表を書いていたのですが、それからは図面に書くことの重みを感じるようになりました。建築を造る1本の線の重要性と同じように、設計者が書く文字(設計の意図や仕上材料まで)の重要性まで考えるようになりました。
それからずっと自分が指定する建築材料の最後が気になっていたので、一般社団法人ロングライフ・ラボさんが石坂産業さんを見学するというイベント情報が届き、参加してきました。
一般社団法人ロングライフ・ラボについてはこちらのリンクからどうぞ。
「一般社団法人ロングライフ・ラボ」
リサイクル率98%の産業廃棄物処理場、石坂産業
一般社団法人ロングライフ・ラボさんの生活者が気軽に”持続可能な社会づくり”ついて学べるロングライフ・カレッジの一環として、埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物中間処理業者の石坂産業株式会社さんを見学してきました。
こちらの記事も読んでいただきたいですが、長く感じる方は是非、石坂産業さんのVISIONに掲載されている動画だけでも見ていただきたいです。
石坂産業のVISION
まず、石坂産業さんから環境についてレクチャーを受けました。
世界経済フォーラムなどで発表された2050年のプラスチックゴミ問題を知っている方は多いかと思います。
2050年の海は魚の量よりもゴミの量の方が多くなると言われています。このことを書き出すと石坂産業さんの話に戻れなくなるのでここでは簡単に触れますが、2050年には海中に漂うプラスチックゴミの量が約8億5,000万〜9億5,000万トンに達するのに対し、魚は8億1,200万〜8億9,900万トンにとどまり、ゴミの量が魚の量を上回る可能性があると言われています。
廃棄物には一般廃棄物と産業廃棄物があり、一般廃棄物は家庭や事業から出るもの(産業廃棄物以外)があり、産業廃棄物は事業活動に伴って発生した廃棄物です。
国土交通省によると、産業廃棄物全体で見ると、建設産業は排出量、最終処分量ともに産業廃棄物全体の約2割を占めています。
だからこそ、現在松戸市で進んでいる既存の戸建をリノベーションすることが重要だと考えています。
レクチャーの後は、工場(プラント)を見学。産業廃棄物中間処理業社の工場は工場に入るトラックが順番待ちのためにトラックが並ぶイメージがあるかもしれませんが、石坂産業さんでは近隣に配慮し産廃を運んできたトラックを敷地内で待機させています。
石坂産業さんでは業界TOP水準の再資源化率を実現するため、すべてのごみを資源にすることをコンセプトにプラントが設計されています。
こちらはコンクリートを処理している部門。コンクリートは外見状のコンクリートだけでなく、コンクリートの中には鉄筋が組まれています。何も考えずにコンクリートを解体すると鉄筋が混じったコンクリートになってしまいますが、石坂産業に持ち込まれるコンクリートは鉄筋とコンクリートをなるべく分別しており、工場でもさらに分別しています。
そうして粉砕したコンクリートを今度は再生砕石としてリサイクルされています。
こちらは廃プラスチックの部門。廃プラスチックが何に再資源されるかというと、RPFという固形燃料になります。
RPFはマテリアルリサイクルが困難な古紙及び廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料で、工業生産用の化石代替燃料として利用されます。
廃棄物が持ち込まれる部門では重機でも分別していますが、さらに人の手で分別します。
ここまでされているから高いリサイクル率が実現しているのだと痛感しました。さらに凄いのが、上の写真の後ろのラインでは扇風機の下や人の右側に写っているのはロボットによる分別もしています。深層学習(ディープラーニング)による解析技術で廃棄物の種類と位置を特定し、対象物のみをロボットアームでピッキングし、ボックスへ回収します。
その改修先のボックスも色分けされてわかりやすいように決められていました。
こちらは木屑を分別する部門。
木屑は製紙用、ボード用、燃料用、エコモアチップなどに再資源として活用されています。
プラントを移動している外部の足元にも再資源化された木材チップが敷かれていました。
プラント内には木質系バイオマスの発電機があります。
こちらの燃料はもちろん石坂産業さんが自分たちで再資源化させたチップを燃料用として原料にしています。
なんでも受け入りができるわけではありません。受け入れが出来る木材を決め、効率よく資源にすることも必要だと思います。
従業員や地域のことを考えた三富(さんとめ)今昔村
プラントの隣には自然豊かな環境が整備されています。
ここはもともと荒廃した雑木林だったようですが、その荒廃した土地を伐採・更新等の管理作業を継続的に行うことによって、生物多様性な武蔵野の美しい里山に復活させました。
上の写真は、プラントのすぐ隣にあり、従業員の休憩スペースだそうです。このスペースを作るだけでも相当な費用がかかっているとのこと。しかし、従業員や環境を大切にする石坂産業さんの理念が伝わる空間だと感じました。
三富今昔村には色々な施設があり、こちらはオークリーフ。
オークリーフでは、自然や環境に優しく、エシカルでフェアトレード関連の商品をセレクトしたナチュラルな雑貨などを販売しています。
他にもポートリーガーデン。
こちらでは、鶏糞を石坂オーガニックファームの土づくりに活かすため鶏をケージフリーのストレスがない環境で飼育されいます。
アニマルウェルフェアに配慮した環境でのびのび育った鶏の卵は、卵としても、加工してプリンなどに使われています。
三富今昔村にはサステナブルフィールドがあり、この中にはイグセントホテルがありました。
イグセントホテルは増えすぎた害虫を食べてくれるハチの仲間やテントウムシのすみかもありました。
こちらは「10000の丘」。
10000の丘はかつて10000トンの不法投棄物があった場所だそうです。今では全く想像ができません。そんな場所を全て整理し、様々なハーブが植えられています。
くぬぎの森交流プラザ
話は前後してしまいますが、石坂産業さんが持つ東京ドーム約4個分の敷地は約80%が森林で、その一部を「三富今昔村」として開放されており、その交流プラザから見学が始まりました。
交流プラザには石坂産業さんの想いが掲げられています。
この「くぬぎの森交流プラザ」は、埼玉所沢で盛んだった所沢絹の養蚕農家を復元して作られました。
埼玉県産のケヤキ材を使って昔ながらの宮造り工法で建てられており、ただ復元するだけではなくいざという時は災害避難所にできるように太陽光などの自家発電機能を備えています。
石坂オーガニックファームのお昼
お昼は、石坂産業さんらしい、オーガニックの食材で作られた「有機小麦の手打ち地粉肉汁うどん」。
三富今昔村が位置する武蔵野地域は、古くから小麦が根付いてきた小麦文化の地。武蔵野うどんは通常よりも麺が太く、コシがあるのが特徴で、茹で上げ麺を、香り出汁のつけ汁につけていただきました。
石坂オーガニックファームの全粒粉小麦を使った、栄養も食べ応えも満点の手打ちうどで、旬の食材、くぬぎの森の季節の野草とともに楽しむことができました。
メニューは
・手打ちうどん
・ファーム野菜と野草の天ぷら
・季節野草のたまご焼き
・旬野菜と野草の煮物
・野草と木の子の白和え
芒種の野草の紹介
ヨモギ
春先の柔らかい新芽を使った草餅は全国的にも有名で、そのまま天ぷらにしたり、おひたし、味噌汁の具、味噌に練り込んで蓬味噌にしても美味しいそうです。
ハコベ
ハコベも春の七草。たんぱく質、カルシウム、鉄、ミネラル、ビタミン類、サポニン、酵素など栄養豊富で、消化作用に優れ、胡麻和えやお味噌汁など幅広く使え、寒い冬に嬉しい栄養源です。
フキ
βカロテンとフキノール(苦み成分)は抗峻化作用を持ち動脈硬化予防・ガン予防・アレルギー改善に効果が期待でき、食物繊維は整腸作用・コレステロール排出、フキノイド(香り成分)は消火液の分泌を促し健胃効果があると言われています。
ヒルガオ
若葉、つる、花はゆでて食用とすなり、おひたし、和え物に活用できます。
石坂産業を見学して
今回、産業廃棄物中間処理業の現場を見学し、ゴミはちゃんと分ければ活用できる資源となり、地球の資源を無駄にしない、できないと改めて感じました。
この現場を是非、メーカーや解体業者の方々にも見学してもらいたいと思いました。メーカーの方は、今後どのような材料で作ればいいか、どのように作ればいいか参考になると思いますし、解体業者の方にはこれから求められる解体を学ぶことができると思います。
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