バイオマスのビレッジ
ちょこちょこ書いていたASAHIKAWA DESIGN WEEKの記事も、今回の最終回です。
去年の2018年6月に訪れた旭川の記事。
前の記事から間が空いてしまったので、今までの記事はこちらです。
ASAHIKAWA DESIGN WEEK 2018 3日目その1 ~下川町SDGsの取組みのSDGsとは?~
ASAHIKAWA DESIGN WEEK 2018 3日目その2 ~下川町SDGsの取組みを支える森~
ASAHIKAWA DESIGN WEEK 2018 3日目その3 ~木を使い切るゼロエミッション~
北海道の下川町では、2002年(平成14年)に議論された近隣5市町村との合併問題から議論を重ね、2004年(平成16年)に開催された町議会第1回定例会において、町長が「当分の間、合併しない」と決断しました。
「単独のまち」として今後の在るべき姿を明確にしていくために、「地域自律プラン」を策定し、これを地域づくりの指針としました。「地域自律プラン」に基づく地域づくりを展開して4年が経過した2008年(平成20年)、下川町は国の「環境モデル都市」の認定を受けました。
「環境モデル都市」とは、日本が目指すべき低炭素社会の姿を具体的にわかりやすく示すため、温室効果ガスの大幅な削減など高い目標を掲げて先駆的な取り組みにチャレンジする都市を「環境モデル都市」として剪定し、関係省庁が連携してその実現を支援するものです。
それから13年後の、2017年(平成29年)にこれまでの活動が評価され、「平成29年度第1回ジャパンSDGsアワード」の本部長(内閣総理大臣)賞を受賞いたしました。
木質原料製造施設の見学
そして今回の「その4」では、見学したかった木質バイオマスボイラーです。
下川町では2004年(平成16年)度に北海道で初めて木質バイオマスボイラーを導入しました。
2001年(平成13年)から新エネルギービジョンを策定し、地域内経済循環を高め、さらに森林に対する資金の還元がますということが重要と考え、町内で化石燃料の消費が最も多い公共温泉施設「五味温泉」に、木質バイオマスボイラーの導入を決めたのです。
当時はまだ重油の価格が安く、木質バイオマスの方が割高になるかもしれないという予想がありましたが、地域の経済を考え英断しました。
その結果、重油価格はその後高騰していったため、木質バイオマスの利用が経済的にも有利となり、現在では年間数百万円の五味温泉の経営コスト削減につなっがっているそうです。
これをきっかけに、下川町では幼児センターや高齢者複合施設など公共施設を中心に木質バイオマスボイラーを導入し、公共施設の熱エネルギーの多くを木質バイオマスで賄うほどになり、2010年(平成22年)には、町内施設へ安定的な燃料供給を行うため、ボイラーの燃料となる木くずを製造する「下川町木質原料製造施設」を整備しました。
木質チップを作る機械は、緑産株式会社のWood Hacker Mega (ウッドハッカー・メガ)シリーズ。
1959年、 世界で最初の産業用ドラムチッパーを開発・製造したドイツJENZ社と緑産株式会社の業務提携から日本専用仕様として生まれた機器で、高速・大容量・低コスト切削能力を活かし、未利用木質資源の高付加価値バイオマス燃料生産に日本各地で数多く活躍しているそうです。
一の橋地区バイオビレッジの木質バイオマスボイラー
木質バイオマスボイラーの原料となるチップを作る木質原料製造施設のあとは、実際にチップが使われている一の橋地区バイオビレッジを見学しました。
下川町では、2010年(平成22年)度町政執行方針の施策の柱として、「交流と産業を産む基盤づくり」の項で、
「市街地の整備では、地域の歴史・文化・自然環境等の特性を活かした個性あるまちづくりの実施をめざした『都市再生整備計画』および『一の橋市街地活性化プラン』の策定を行い、空き家対策や下川らしい町並み・景観形成など生活の向上と地域経済・社会の活性化を図る」
ことを明確に示しました。これにより、老朽化が進んでいた公営住宅の建て替えを中心とする、一の橋地区の「地域の再興」に向けた取り組みが動きと並行して、町は2011年(平成23年)に国家戦略プロジェクトである「環境未来都市」に選定されたことにより、一の橋地区の再興は「環境未来都市」の取り組みとしても進められていくこととなりました。
一の橋バイオビレッジでは、暮らしとエネルギー自給、地域雇用が考えられており、一の橋バイオビレッジの構想は、
・地域資源である木質バイオマスを主とするエネルギーの自給を目指すこと
・次世代に向けた持続可能な集落をデザインすること
・コレクティブな集住化モデルを形成すること
などを目的に進められ、そのエネルギーとして、木質バイオマスボイラーがあります。
木質バイオマスから熱エネルギーを生み出すには専用のボイラーが必要で、一の橋地区バイオビレッジの熱供給施設にはスイス製の木質バイオマスボイラーが2基導入されていました。
ここで作り出された熱エネルギーは、地下配管を通じてビレッジ内の住戸群はもちろん、ビレッジ外の町立障害者支援施設の「山びこ学園」や温室ハウスの暖房や給湯をまかなっています。
下川町の取り組みを通して
こうやって下川町の取り組みを書くと、4つの記事でまとめることができますが、書いていいてつくづく思ったのは、「ローマは一日にして成らず」ということです。
町民が自分ごとと捉え、トップの英断があり、色々な人を巻き込み、根気よく、自分たちのためではなく、次世代のことを考えてきたからこそ、継続して取り組まれてきたんだなと思います。
下川町の取り組みについては、
「エネルギー自立と地域創造(づくり)」(中西出版)の本も参照しているので、詳しく知りたい方は、こちらの本がおすすめです!