土壁が不燃材料の認定を受ける
1月29日(日)に東京都左官組合連合会が主催する「左官伝統工法を見る講習会(土壁編)」に参加してきました。
左官伝統工法の土壁が令和4年5月31日に国土交通省が不燃材料として認められたことにより、建物の内・外壁を切り返し等の土壁あらわし仕上げが可能になったとのことです。これからは古民家等をリノベーションして旅館ホテルに用途変更をすることができますし、大臣認定の聚楽壁等の既調合塗り材料を使用せずに地場の土を使用した地方性のある建築が可能になるため、今後は新たな展開が期待されます。
この講習会は、一般社団法人日本左官業組合連合会の鈴木顧問による標準施工要領の説明や質疑応答があり、さらに左官職人の久住有生さんによる実演講習もあるためか、北海道、富山、岡山、山口、鹿児島などから総勢150名の方が参加していました。

左官職人の久住有生さんは建築業界でも有名な方で、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」にも出演された方です。久住有生さんは私服で作業される方で、理由は服を汚すような職人は半人前で、あえて普段着でやっているという考えのため、スタイリッシュな格好で作業をされます。

2012年に静岡に間伐体験と山葵棚を見に行った時に、友達に日本平ホテルに連れてもらったことがあり、そのホテルの壁を見た時にどこかで見たことがあると思ったのが、久住有生さんたちが作った左官の壁でした。その記事がこちら
その時から久住さんのことを知っていて、憧れもあったということもあり、この講習会に参加しました。

土壁とは
土壁とは、塗り壁の中の1つで、塗り壁は一般的に上塗りに何を塗るかで区別されます。
土を塗って仕上げたもんが「土壁」、漆喰を塗ったものが「漆喰壁」。塗り壁の種類は前述した「土壁」「漆喰壁」「砂壁」「プラスター壁」があります。
塗り壁とは
では、塗り壁とはどうゆうものかというと、セメントや土、消石灰などの結合材に、水、骨材、繊維、顔料などを混ぜ合わせた左官材料を塗って仕上げた壁のことです。主な成分が天然素材であるため健康的で、落ち着きがあり、さらに規格品ではないのでオリジナリティーがある仕上がりにできるのも特徴です。また、漆喰や珪藻土などの吸放湿性がある材料は、空間の湿度調節をする機能もあり、快適な室内環境づくりに貢献します。
そうゆうこともあり、弊社では予算調整が大変にはなりますが、できる限り質のいい空間で過ごしてもらいたいと考えており、自然素材を多用しています。
鏝(コテ)の種類
久住さんはこの会場に普段使われている鏝(コテ)の一部を持ってきてくれていましたが、その数100近く。

久住有生さんが鏝のことを紹介していた時に「ニシカンの油焼きの鏝」や「厚みのある鏝は4mmほどある」とお話をされていて、調べてみると「ニシカン」というのは「東京西勘」のことみたいです。

実演の最後は、久住有生さんがアドバイスをしながら若手職人に実際に塗ってもらうという時間もありました。
材質・作業工程による鏝(コテ)の分類
黒打ち・地金鏝:地金を鍛えたもので、中塗りに使用。
半焼き鏝:肉厚は薄く、下塗り、中塗りに使用。
油焼き鏝:鋼を鍛錬したのち、油に焼き入れし、そして焼戻しによって柔軟性を持たせたもの。仕上げ作業、撫で仕上げに使用。
※引用:伝統的左官施工法(一般社団法人 日本左官業組合連合会)
材質による固定の分類
ステンレス鏝:ステンレス鋼でつくられており、主に上塗り仕上げに使用される。
木鏝:檜、杉材が使用され、むら取りに使用。
プラスチック・ビニル鏝:錆が出なく、滑りがよい。仕上げに使用。
※引用:伝統的左官施工法(一般社団法人 日本左官業組合連合会)
細工の鏝
面引き鏝:左官作業の中で出隅部分の仕上げに使用する。その形状、寸法の種類は、多岐にわたり、細工の仕上げの中心的存在である。規格は直径の単位で表され、規定のRをもって提示される。例えば内丸の長さ120mm・R12mmと示したときは、長さが120mmで鏝の中心部である面が12mmということになる。
切付け鏝:「隅付け鏝」と呼ばれ、入隅部分の仕上げに使用される。先端部分では内部に切り込まれており、材料との鏝離れがよくなる。
くり鏝:壁と床・壁と天井の接合部であるアール面の仕様に使われる。「繰り鏝(くりごて)」とも記載される。
四半鏝:左官の主力の鏝である。1尺の四半部でこの名の由来とされる。鏝幅が狭い方から「元首四半鏝」、「元首四半柳刃鏝(もとくびしはんやなぎばこて)、」「元首お福柳刃鏝」となる。
トメラサライ鏝:柱や梁の留め部分や蛇腹仕上げに使用される。
張り通し鏝:家屋の梁の塗り付けに使用するもので、「梁通し鏝」とも記載する。
鶴首(つるくび)・面戸鏝:首が鶴のように長いのでこの呼び名になった。瓦の合わせ目、棟面戸(むねめんど)、小舞面戸の塗込みに使用する。同じ面戸鏝でも首部分に特徴がある。
欄間(らんま)鏝:鴨居(かもい)や内法長押(うちのりなげし)の上の壁で、鏝の首が長いもの。中首鏝が広く使用される以前からあったことで中首鏝の原型とされる。鏝の首が普通の3cmであるのに対して、欄間鏝6cmと倍の長さになる。
角切り鏝・砂切鏝(しゃきりごて):定木のはかり作業で塗り付けた材料がはみ出したとき、その材料をkりい落とすのに使用される。
つぶ引き鏝:油焼きの強靭な鋼製で引面が凹弧面をしていて、その上下端がカーブしている。
くり引き鏝:つぶ引き鏝と反対に凸面になっている。くり鏝には、その他に「中首らお面切り付け鏝」、「中首平くり鏝」、「元首平くり鏝」「かんぐり」、「エンバル」等がある。
目地鏝:レンガ・ブロック・タイルの目地をモルタルで詰めたり、表面仕上げをする鏝である。作業や仕上げの種類によって多くの目地巾寸法と多様な形状がある。「平目地」、「覆輪(ふくりん)目地」、「レール鏝」、「ひび引き鏝」、「コーキング鏝」等がある。
彫刻用鏝:左官職人が独自に開発した道具が多く、ときにはスプーン、フォークなども漆喰彫刻には利用される。「両頭切付け」、「玉匙(さじ)」、「両頭ラオ匙」、「箆(へら)」、「左官針」等がある。
※引用:伝統的左官施工法(一般社団法人 日本左官業組合連合会)
京壁仕様の鏝
裏すき鏝:地金をよく鍛造し鍛えたもの。鏝裏面を擦り磨いてあり、高度の中塗りの撫で切り、また切返し中塗り仕上げ使用する。水捏ねの上塗り仕上げで、水捏鏝を使う直前に”撫(な)ぜる”ときに使用する。
熟し鏝(こなしごて)・伏せ込み鏝:鋼を使用して丹念に鍛造したものに撫面が磨いてある。大津磨き、漆喰磨きの伏せ込みなどに使用する。
波消し鏝:鏝波を消すために使用されるもの。先端には、糊溜り(のりだまり)という窪みがついている。
波取り鏝:「波拾い(なみひろい)」ともいい、京壁の仕上げの際に発生する「あま」を軽く押さえて拾い上げていくもの。他の左官鏝のように塗り付ける道具ではない。
水捏撫で鏝(みずごねなでごて):「撫ぜ鏝」、「水鏝」ともいい、他の鏝に比べて肉厚にできている。鏝の表面に京壁の水滴を転がすための水溜まりがあり、上面に槌目(つちめ)がついている。
富士形引き鏝:鏝の先が富士山のような形状で、磨き仕上げ等に使用する。塗り付け鏝ではなく、小壁、ちり際の隅の押さえ、細長い壁を引くのに適している。
※引用:伝統的左官施工法(一般社団法人 日本左官業組合連合会)
建築設計事務所でも素材・伝統工法のことを学ぶ
弊社では職人による仕事を多く取り入れるようにしているのですが、その理由は職人が高齢化しているのと、職人による仕事が減っているため手仕事ができる職人が将来不足することを懸念しているからです。そのため、職人にお金が入るようなオリジナル空間を提案し、実現させていきたいと常々思っています。そのためにも、提案する責任として、素材・建材について学ぶ必要があると考えており、できる限りこのような機会には参加するようにしております。

この職人の仕事が減っていることに久住さんも気にされていて、職人さんの業界でも重要な問題と捉えているようです。

この講習会に参加したのは、講習会会場の近くに東京武道館があるということも理由の1つです。都内から電車で帰ってくるとビルの合間から東京武道館がずっと目に入っていました。この東京武道館は六角鬼丈さんという建築家が設計し、1989年に開業しました。講習会が終わった後にこの東京武道館に立ち寄り、外部だけですがぐるぐる回って見学してきました。
東京武道館は形状が独特で、1980年代に流行したポストモダン建築です。
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