高知県梼原町を訪れた理由
高知県梼原町を2022年の9月末に訪ねました。梼原町を訪ねた理由は隈研吾さんの建物を見学するためではありません。独立してから日本の林業・山のことがずっと頭の片隅にあり、建築(住宅)を建てる時に使う木材には国産材を活用することをクライアントにも伝えており、その取り組みとして建主と高知県を訪れ、高知の山や製材所、石灰工場などを見学してもらい高知県産材を使った柏の家2(回遊する家)があります。
しかし、ずっと建主頼みになって受け身になっていることに引っ掛かりがあり、能動的にアクションを起こそうと思い立ち、売上の一部を植樹活動に繋げようと考えました。ただ植樹活動に募金をするのではなく、できれば植樹を通して一次産業の方々、地域の方達と顔が見える繋がりを作っていきたいと考え、以前から繋がりのある高知県庁に相談し梼原町を紹介してもらい訪ねました。
高知県では、「環境先進企業との協働の森づくり事業」というものがあり、環境問題に積極的に取り組んでいる企業や団体の皆様と、市町村・森林組合・高知県などが「協働の森パートナーズ協定」を締結して、森林の再生を行うと共に、地域と都市部の交流による地域活性化に取り組んでいます。その一環で梼原町を紹介していただきました。
このような活動を通して、地域の食や林業、日本の山に興味を持ってもらい、国産材を使いたいという人を増やし、そのような方々と国産材の家づくりをしていきたいと考えています。
坂本龍一さんが立ち上げたmore treesの活動に近いかもしれません。
高知県梼原町という場所と成り立ち
梼原町は町面積の91%を森林が占め、標高1455mにもなる雄大な四国カルストに抱かれた自然豊かな山間の小さな町です。四国カルスト高原は、全国的にも珍しい高位高原カルスト地形になっており、至る所に手付かずの自然が残り、晴れた日などには太平洋から瀬戸内海まで一望できます。
年平均気温:13.4°C
最高気温 :38.7°C
最低気温 :-12.0°C
年間降水量:2,630mm
積雪(中央部):1.0m~1.5m
梼原町は、延喜13年(913年)津野経高公がこの地に入り、開拓によって津野荘を築いて以来687年間津野氏の所領となり、地域の政治、文化の中心地として発展してきました。
慶長5年(1600年)山内氏の所領となり、梼原6ケ村東津野3ヶ村をあわせて「津野山郷」と称し、明治維新の変遷を経て明治22年(1889年)の、梼原、越知面(おちめん)、四万川(しまがわ)、初瀬、中平、松原の6ヶ村を「西津野村」と改称し、全国屈指の大村として発足しました。明治45年(1912年)村名を「梼原村」と改め、さらに昭和41年(1966年)町制を施行して「梼原町」となり現在に至ります。
高知県梼原町の取り組み〜地域資源の積極的利用〜
森、水、風、光などの自然エネルギーを活かした取り組みによって、生き物にやさしい低炭素なまちづくりを進めており、2050年には温室効果ガス排出量70%削減、吸収量の4.3倍増(1990年)と、地域資源利用によるエネルギー自給率100%超を目指しているとのことですが、緑が多く川が綺麗な梼原を訪れれば実現できるだろうなと感じました。
これは北海道の下川町を訪れた時も、自然を大切にする姿勢から感じました。
「ASAHIKAWA DESIGN WEEK 2018 3日目その2 〜下川町SDGsの取組みを支える森〜」
風力発電では、梼原町の風車は風速3mから発電をはじめ、最大で1時間に600KWの電気をつくることができます。風車の内部にはコンピュータが設置されており、風車が一番良い状況で風を受けることができるよう風車の向きや、羽根の角度を自動で管理しているとのことで、これにはビックリしました。標高1,300mの四国カルストに設置された風車はデンマーク製で、経済産業省、新エネルギー・産業技術開発機構、高知工科大学などの協力のもと建設されました。
森林資源の循環利用としては後述しますが、間伐の実施により森がCO2を吸収することに加え、町内で収穫した木(町産材)を積極的に利用することで、さらに効果を得ており、あわせてCO2削減効果を持つ新エネルギー機器の導入にも積極的に取り組んでいます。
高知県梼原町は建築家隈研吾さんの建築タウン
梼原総合庁舎(設計者:隈研吾)
羽田を早く出て高知空港に9時に到着し、高知空港からレンタカーで梼原へ。梼原総合庁舎までは1時間30分。
梼原総合庁舎に梼原町役場が入っており、梼原町森林の文化創造推進課の方とお話をしてきました。
建物の大部分に町産材を利用、新エネルギー利用、自然エネルギー利用など梼原町が進める施策をパッケージングしたような建物。屋根には太陽光パネルが設置されています。2009年12月には、建築物の環境性能で評価・格付けするCASBEEにおいて、最高ランクであるSクラスの正式認定を受けています。
梼原総合庁舎は梼原産の杉材が大量に使われています。1階のホールには梼原伝統の茶堂があり、訪れた人を出迎えてくれます。なぜ茶堂があるかというと、梼原の中心部に来る道沿いに茶堂という小さな茅葺き小屋がいくつも見かけました。この茶堂は壁があるのは背面側だけの開けっぴろげの作りで、かつては土佐から伊予にかけて50棟以上はあったらしいが、今も梼原町内には13棟の茶堂が残っています。道行く旅人に村人が茶菓を振舞ったといい、弘法大師や地蔵、観音、薬師の像が置かれていて、信仰の集まりにも使われたそうです。
梼原町森林の文化創造推進課と話した感触は、まずはもっと梼原に通い、梼原との関係を築いてからじゃないとパートナーにはなれないとのことで、あまり歓迎という感じではありませんでした。弊社がすでにパートナーになっている企業のような大手ではないということなどが理由のような気がします。
ゆすはら雲の上の図書館/YURURIゆすはら(設計者:隈研吾)
梼原産の木材を活用しており、館内にはボルダリング設備やカフェなども併設されている図書館。
図書館というより、森のような空間を目指し、鉄とスギの混構造で、人間を優しく包み込む「樹冠」を創ったそうです。
鉄骨造に4本交叉の木組みがまとわり付き、樹形を真似るのではない幾何学が独特の樹形模様を生み出している。法規としては、図書館が準耐火、福祉施設が耐火が要求され、そのような建物で木材を見せるには、地震にだけ効かせる手法がある。耐火のため重力に対しては鉄骨のラーメン構造とし、これに地震に効く木組みをまとわりつかせていくと鉄骨も減らすことができる。木組は方杖状にのみ効かせている。地震時にしか効かなくてもよいものとすれば耐火を要求されないので燃えしろも設計も被覆も必要ない。
木組みの交差角はやや自由に決められるが、角度は統一している。そこへ材のピッチをバーコード状に不均一にすると交差部の刻み方はすべて同じながら、樹状の模様を生み出すことができている。
材は全て120mm角で統一しているが、屋根と柱を繋ぐ材が主材で、これに交差する材が座屈補剛材の役割を担う。材のピッチが細かい部分で鉄骨に接合する時に接合金物が複雑になるのを、施工者からの提案で干渉部に角鋼を仕込む解決法を採っている。
(引用:新建築2018年10月号の構造家佐藤淳のコメント)
雲の上のギャラリー(設計者:隈研吾)
森のような建築物で梼原の森の中に溶け込ませたいという思いから始まった雲の上のギャラリー。
日本建築の軒を支える「斗栱(ときょう)」という伝統的な木材表現をモチーフとして、刎木(はねぎ)を何本も重ねながら、桁を乗せていく「やじろべえ型刎橋(はねばし)」。
この組み方を見ると、内藤廣建築設計事務所で担当させていただいた日向市駅駅前広場のステージを設計している時の苦労を思い出します。
まちの駅「ゆすはら」(設計者:隈研吾)
梼原町の特産物販売と、ホテルが融合したまちの駅「ゆすはら」。施設東側外壁に用いられているのは茅(かや)で、町内の伝統的な茅葺屋根に学ばれ設計されました。茅のファサードは特徴的な景観を生み出すだけでなく、通気性・断熱性に優れるため、自然の力によって快適な室内環境を創っております。 また、まちの中の「森」というコンセプトを映すように、施設内には杉丸太の柱を林立させ、森の中を巡るような内部空間を作り出しています。
地域物産展示場及び滞在施設を兼ね備えた、木造3階建(一部RC造)の施設。
①太陽光発電設備により太陽光エネルギーから電気を作り施設内電力を賄います。
②電気自動車充電整備により、二酸化炭素排出がない環境に配慮した自動車への対応を図ります。
③町内産木材を内外装に活用することにより、森林整備促進を図り、低炭素社会実現に貢献します。
梼原の続き
隈研吾さんの建築を紹介していたら長くなってしまったので、梼原のその他の建築については下記の記事で紹介しています。
Blogでは載せきれない写真をSNSにのせています
大畠個人のInstagramでは、Blogに載せきれない写真を随時アップしているので、こちらも是非覗いてみてください。
Instagram:@ryoji.ohata
Facebookをやっている方はこちらから
Facebook:@大畠稜司
Twitterをやっている方はこちらから
Twitter:@RyojiOhata
Linkedlnをやっている方はこちらから
Linkedln:@Ryoji Ohata
弊社設計事務所のInstagramでも、現場や今までの事例などをアップしているので、こちらも是非。
Instagram:@ryojiohataarchitect_official
Facebookをやっている方はこちらから
Facebookではリンクが貼れるので、オープンハウスやイベント情報を載せることが多いです。
Facebbok:@大畠稜司建築設計事務所
Twitterをやっている方はこちらから
Twitter:@RyojiOhataAAA
是非、個人も設計事務所のアカウントもフォロー、いいねをしていただいて、情報をシェアしてください。
よろしくお願い致します。