名古屋の家1(対峙しない家)について

所在地 :愛知県名古屋市
主要用途:住宅
構造  :木造 地上2階建
敷地面積:319.71m²
建築面積:  99.17m²
延床面積:169.74m²
施工  :株式会社ザイソウハウス
構造  :NAWAKENJI-M 株式会社
植栽  :有限会社LIVING DESIGN
撮影  :大畠稜司建築設計事務所

建主から、土地を購入する前に一度土地を見て欲しいということから今回のプロジェクトは始まった。敷地は道路に面した北側の敷地と、道路から奥まった南側の敷地があり、どちらを購入するべきか悩まれていたが、建主と敷地を訪れ、周辺環境から旗竿敷地となる南側の敷地を勧めた。奥の敷地だが南側ということ、高台となっており2階からの景色が良さそうなこと、手前の敷地はまだ買い手がいないということなどを考慮した結果だ。しかし、2つ問題点かあると感じていた。それは、工事をするときには手前の敷地で工事が始まっていると工事に手間がかかり、さらに敷地が高台のため3方が擁壁に囲まれているということだった。だが、擁壁は設計で対応できると考え、工事については着工前から施工会社と詰めることで対応できると考え、土地の購入を勧め、このプロジェクトが始まった。

このプロジェクトでは、多くの初がある。初の遠方での設計監理、初の旗竿敷地での住宅設計、初の植栽デザイン、初の擁壁がある土地での設計、初の蕪束、初めて建物の配置を敷地からずらして設計、初の長期優良住宅、初の長期優良住宅での在来風呂設計、初の全館空調、初の移動本棚。

敷地が旗竿敷地ということから建物の四方が囲われてしまうため、1枚の大屋根だとアプローチを通って家を見た時に圧迫感を感じるだろうと考え、空間ごとに屋根の高さを変えることで敷地の立体的な圧迫感の軽減を計った。また、敷地境界線と平行にならないように配置することで、周囲の住宅の窓と正対にならないようにし、さらに建物の周辺に空間が生まれることを狙った。建物をずらした意図には、狭く傾斜のあるアプローチを通ってきた建主を迎え入れることも考えた。アプローチの先に家が立ち塞がるのではなく、斜めに迎え入れることで閉塞感をなくし、さらに斜めに外壁が立ち上がることでリビングの灯りがアプローチから見え、「帰ってきた」とほっとして欲しいと思ったのだ。この迎え入れ方でイメージにあったのが岩手県平泉の中尊寺の配置である。
これらのことは、建主と敷地を訪れた時からイメージがあり、最終的には最初のイメージのまま形にできた。形にできたが、この土地には制約があり、敷地境界線から1.5m離して建てなければいけないので、配置を斜めにするだけで大きな制約が生まれる。また、隣地境界線からの斜線制限があるのため、建物を斜めにすると立体的にも制約が生まれる。自ら生み出した制約とは言え、平面的にも、立体的にも見えない制約がある中で形にできたことに安堵している。

この住宅は長期優良住宅である。弊社では耐震性能を耐震等級2で設計することを勧めており、昨今の気象を考えると夏の断熱対策を考えなければと考えている。そうなると質全的に長期優良住宅の性能になるため、税制優遇もあることから長期優良住宅で設計をした。そこで大きな問題がある。長期優良住宅ではメンテナンスのことを考慮して設計しなければいけないので、お風呂は大概、ユニットバスとなる。ユニットバスは掃除もしやすくいいのだが、味気ない。そこで設計で工夫をし、今回のお風呂は長期優良住宅でありながら在来風呂のオリジナルお風呂となっている。私はお風呂が好きで、このお風呂時間は大切な時間にしたいし、して欲しいという思いから、在来風呂に拘った。

長期優良住宅で耐震等級2のため、構造は構造事務所に依頼している。今回依頼した構造事務所はNAWAKENJI-M株式会社の名和さん。擁壁は地中ではL字となっており、底盤が敷地側に入っています。そうするとその上に荷重がかけれなたいため、支持する部分で工夫が必要となる。当初弊社で考えていたのは費用がかかるため、名和さんが上手に設計してくれた。また、リビングの空間を創るのに蕪束で対応できないかとお願いしたり、壁厚を105mmの柱でお願いできないか、稼働本棚を設置したいなどいろいろとお願いをして、設計側でイメージしていた空間が名和さんの設計力で実現している。

今回は、空調をエアコンに頼らず、全館空調としてOMソーラーのパッシブエアコンを採用した。全館空調は本体の設置場所、そこからのダクトの経路などを考えながら、意匠・構造を検討しなければいけないので手間がかかるが、どこにいても同じ室温、夏は湿気が感じられずカラッとしているので、気に入った。本体は壊れた部品を交換すれば長く使えるということも採用に至った理由の1つだ。

遠方での設計監理は下積み時代でも経験していなかったことだったが、施工を担当してくれた株式会社ザイソウハウスさんが細かく対応してくれたため、思い描いていた家が形になった。また、植栽は岐阜のリビングデザインさんに依頼し、アプローチから綺麗にデザインしてくれたので、敷地全体でいい空間ができたと思っている。

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