どこにもないモノを残す
現在千葉県我孫子市で1982年に建てられた集合住宅の1室をリノベーションするプロジェクトが進んでいます。
集合住宅の構造はコンクリート造のため、壊せない壁が多くあり、そのコンクリートの壁で間取りは制限されてしまうので、壊せない壁があるなら、その壁を生かそう考えました。
壁を生かすとは、間取りの壁に使うのはもちろんですが、もともと仕上げとしてコンクリートに張られていたクロスを剥がし、クロスを剥がしたコンクリートの壁には何も手を加えず、建物の本来の姿をそのまま現すことで、既存の壁を生かすように考えました。
我孫子の家1(路地裏のある家)では、コンクリートの壁が南北に2枚並んでおり、その壁が部屋を区切っていました。
こうゆうコンクリートの壁が壊せないのですが、クロスを剥がし、無骨な感じでコンクリートの現しにしました。
ただ、断熱材を入れる場所はコンクリートの壁を現しにできないので、そうゆう場所は断熱材の上に石膏ボードを張り、自然塗料で仕上げるようにしています。
クロスが張られていたコンクリートの壁は、綺麗にクロスを剥がしてもらい、素材感がある、いい表情をした壁が出来上がりありそうです。
上の写真は、石膏ボードが張られた壁とコンクリートの壁がありますが、ここは自然塗料の素材感とコンクリートの素材感が共存する空間となります。
コンクリートの断面が見える、リビングダイニングの境。
上の写真の中央部がシャワーブースとなります。
今回のお風呂も松戸の家4(FLAT HOUSE)と同じ、FRPで仕上げるデザインにしています。
我孫子の家1(路地裏のある家)で考えたこと
このプロジェクトの始まりはこの物件を購入する前から相談があり、建て主のライフスタイルなどを聞き、どのような生活が送れるかを想像しながら購入予定の部屋を確認したり、周辺を散策しました。
我孫子という場所をじっくり歩いたことがなかったのですが、実際に訪れてみると、細い道が多く、迷路のようになっていました。
上の写真の道路を見るとタイヤの跡がついているのがわかると思いますが、見ての通り車1台分の幅しかありません。
細い道が多く、坂道が多いのも我孫子の特徴かなと思いました。
細い道や坂道が多い我孫子で創る家として、こういった周辺の環境の特徴を住宅に取り入れたいと考え、
我孫子の家1では、土間を作り、土間の壁にレンガタイルを貼ることで、路地裏のような空間を創ることにしました。
今回共に仕事をする工務店は、株式会社助川工務店
我孫子の家1(路地裏のある家)で一緒に仕事をさせていただくのは、千葉県柏市に会社を構える「株式会社助川工務店」さんです。
株式会社助川工務店さんは、明治二十年(1887年)創業の老舗の工務店で、助川工務店さんとの仕事は、今回で3件目。
初めての仕事は、千葉県松戸市の「松戸の家3(ゲルのある家)」の新築住宅。
2件目は、こちらも千葉県松戸市で設計をさせていただいた診療所のリノベーションプロジェクト、「松戸の診療所(無垢な診療所)」です。
木、木造に精通していて、寺社仏閣を手掛ける技術がある職人さんをかかえており、現場の管理などもしっかりしているので、安心して仕事をお願いができる工務店さんです。
独立してまもない設計事務所が、創業100年を超える工務店と仕事を一緒にさせてもらっており、巡り合わせに感謝する今日この頃。